レオナルド・ディカプリオ主演の映画『ブラッド・ダイヤモンド』。
アカデミー賞5部門にノミネートされた、紛争地域で採掘された希少なピンクダイヤモンドをめぐりさまざまな思惑が絡み合う社会問題を扱ったサスペンスです。
今回はそんな『ブラッド・ダイヤモンド』についてネタバレありの解説をしていきます。まだ見たことない、もう一度見返したいという方は、ぜひチェックしてください。
映画『ブラッド・ダイアモンド』のあらすじ
1999年、反政府武装勢力の革命統一戦線(RUF)の蜂起によって内戦が続くシオラレオネ。平穏に暮らす漁師のソロモン(ジャイモン・フンスー)の村にもRUFの魔の手が迫り、村人が殺戮されていく中、家族を守るためにRUFに働き手として捕らわれてしまいます。
連行された先はダイヤモンド鉱山。RUFに見張られながら原石を探す日々を送る中、ある日大きなピンクダイヤモンドの原石を見つけます。見張りのひとりに見つかって奪われそうになる寸前、政府軍の攻撃が始まった混乱に乗じてダイヤを埋めて隠すのです。
政府軍に捕えられ留置場に入れられるソロモン。同じ留置場にはダイヤを奪おうとしたRUFの見張りも捕えられており、ダイヤを渡すようソロモンを脅します。その会話を偶然聞いていた元白人傭兵のアーチャー(レオナルド・ディカプリオ)は、ダイヤを横取りしようとソロモンを釈放させて隠した場所まで案内させるのですが・・・。
紛争ダイヤモンドとは?
ブラッド・ダイヤモンドは、紛争ダイヤモンドやコンフリクト・ダイヤモンドと呼ばれることもあります。
いわゆる紛争の資金源になっているダイヤモンドを指し、本作で登場するシオラレオネでは1991年から2002年まで続く内戦の資金源となり、とくに問題になっている地域でした。
ただの村人が村を襲ってきた武装勢力に捕われて、強制的に鉱山で働かされていた実態があります。
現在では、作中のラストにあったように国連や各国政府が紛争ダイヤモンドを市場で取り扱わないための取り組み(キンバリープロセス証明制度)を実施しています。
『ブラッド・ダイアモンド』は実話?
結論から言うと、この映画は実話ではありません。
しかし、紛争地域におけるダイヤの採掘・密輸の問題については、現実でも起きていたことです。
ダイヤモンドが多数産出されるアフリカでは、1980年代から2000年近くまで内戦が頻発していました。そこで資金調達のために不法に取引されていたのがダイヤモンドといわれています。
内戦時には少年兵の問題も後を絶たず、息子を少年兵として捉えられてしまうソロモンの苦悩は現実にもあった問題でしょう。
ブラッドダイヤモンドをめぐる攻防戦!映画ネタバレ解説
ここからは『ブラッド・ダイアモンド』という作品についてさらに深堀していきます。
ネタバレもありますので、まだご覧になっていない方はご注意ください。
アフリカの地から抜け出すための希望
現在はジンバブエ共和国の一部地域となっているローデシア出身の元傭兵アーチャーは、RUFから武器調達と引き換えにダイヤを得ている密輸業者。仕事中にシエラレオネ政府軍に逮捕され、ソロモンと同じ留置場に拘留されます。ソロモンとRUFの会話からピンクダイヤの存在を知り、紛争の絶えないアフリカの地からの脱出を長年望んでいたアーチャーは横取りしようと目論むのです。
さっさとダイヤを奪って逃走したいアーチャーですが、ソロモンが家族を取り戻すまではダイヤの場所を教えないと反抗されていまいます。奪う側と奪われる側、互いに相いれない部分もありながら息子を救い出そうとするソロモンの姿に思うところもあるようで・・・。
息子を取り戻し遂にダイヤを取り戻した途端、今度はアーチャーの傭兵時代の元上官が部隊を引き連れて現れ、ダイヤを渡すようにと追い立てます。必死に逃げながらもアーチャーは瀕死の重傷を負ってしまい、泣く泣くソロモンにダイヤを渡して逃がします。
旅の途中知り合った女性ジャーナリストのマディー(ジェニファー・コネリー)に衛星電話でソロモン家族を助けるように告げ、最後まで逃れられなかったアフリカの雄大な台地を目にして息を引き取る姿が印象的です。
少年兵として捕われた息子を救おうとする父親の愛
家族を第一に考える実直な父親・ソロモン。漁師として平凡な生活をしていた中、突然村がRUFに襲われます。残虐な行為を平気で行うRUFから家族を逃がしますが、自分は捕まりダイヤモンド鉱山採掘の労働を強制されることに。そこでの作業中に見つけたとてつもない大きさのダイヤの原石が発端となり、ソロモンは様々な人の思惑に翻弄されていくのです。
最初から最後まで一貫して家族を第一に思うソロモン。RUFに少年兵として捉えられた息子のため、どんなに危険だろうと立ち向かう姿はまさに良き父親です。価値観のちがうアーチャーに反発しながらも、共に過ごすうちに理解を示そうとする一面もあり、愛情深い人間性が垣間見えます。
本作でソロモン演じるジャイモン・フンスーはアカデミー助演男優賞にノミネートされました。
紛争ダイヤ密輸の実態を追うことで見えてきた現実
もう一人のキーパーソンは、紛争ダイヤ密輸の実態を追う女性ジャーナリスト・マディーです。紛争地域からダイヤを密輸している先進国の宝飾業界の闇を暴くべく、自らシオラレオネを訪れ取材をする志の高い人物として描かれています。
シオラレオネの首都”フリータウン”のクラブで見かけたアーチャーが紛争ダイヤのブローカーだと知ると、証拠を求めて接近しますがアーチャーに敬遠されます。しかしその後、ソロモンの家族と引き合わせる手伝いをすることで関係が接近することに。
アーチャーと互いに抱える過去の苦悩を打ち明ける一幕もあり、心を許していきます。そして、アーチャーからダイヤの裏取引の証拠を託されたマディーは帰国し、そこへ1本の電話が。ロンドンへ逃げ延びたソロモン家族と再会し、マディーの執筆したブラッド・ダイアモンドに関する記事は世界に反響を与えることになりました。
監督は『ラスト・サムライ』を手掛けたエドワード・ズウィック
本作の監督エドワード・ズウィックは、日本を舞台にした『ラスト・サムライ』を手掛けており、日本でも知られている監督のひとりでしょう。
また、『恋におちたシェイクスピア』や『アイ・アム・サム』などアカデミー賞の各賞を受賞する作品に製作として携わっています。
映画『ブラッド・ダイアモンド』のネタバレ解説まとめ
ここまで、映画『ブラッド・ダイアモンド』についてネタバレありでご紹介してきました。我々が身近で目にするジュエリーが紛争ダイヤモンドかもしれないという知らなければ気づけない問題を考えさせられる映画です。
以前観たことがある方も、改めて背景を知ってからだと新たな発見があるかもしれませんよ。
▼作品詳細
原題:Blood Diamond
日本公開日:2007年4月7日
監督:エドワード・ズウィック
脚本:チャールズ・リーヴィット
出演:レオナルド・ディカプリオ、ジェニファー・コネリー、ジャイモン・フンスー