【ネタバレ解説】偽りながら生きる2人を描いた映画『インファナル・アフェア』

映画

香港を舞台に警察とマフィア、それぞれの組織から敵対組織に若者を送りこむことから始まる映画『インファナル・アフェア』。

日米でリメイク作品ができたほど、ストーリー性に優れた作品です。

今回は、全三部作からなる香港映画の傑作サスペンス『インファナル・アフェア』についてネタバレありの解説をしていきます。

映画『インファナル・アフェア』のあらすじ

トンネル

マフィアが幅を利かせる地域で育った青年ラウ(アンディ・ラウ)は、地元マフィアに入ってすぐボスに有能さを見出されて警察学校に送り込まれる。

一方、警察学校で優秀な成績を叩き出していた青年ヤン(トニー・レオン)は、警視に見込まれてマフィアへの潜入を命じられることに。優秀な二人はそれぞれの組織で能力を評価されて台頭していきます。

潜入から10年後、マフィアの大きな麻薬取引をきっかけに、二人のスパイとしての立場が危うくなっていき・・・。

全三部作に渡る壮大なストーリー

インファナル・アフェアは三部作に分かれており、それぞれテーマがあります。

  • 第一作:インファナル・アフェア(2002年)
  • 第二作:インファナル・アフェアII 無間序曲 (2003年)
  • 第三作:インファナル・アフェアIII 終極無間 (2003年)

第一作は、ヤンとラウが潜入先の組織である程度の地位を獲得しはている現在の姿からヤンの死までが描かれています。警察とマフィア、それぞれで本当の姿を隠しながら働く二人が、時にバレそうになるひやひや感や葛藤して悩む姿はスリリングなサスペンスです。

第二作は、第一作から遡ること11年、1991年の香港返還までの時代を背景にしているストーリー。若手俳優がヤンとラウを演じ、互いの組織に潜入するまでを描いています。

完結編となる第三作は、ヤンの死後とそれまで描かれてこなかった新事実が発覚します。警察内部に潜伏し続けるラウの最後の戦いを描く、手に汗握るストーリーです。

香港ノワールとは?

香港

映画のジャンルのひとつとして、「フィルム・ノワール」というものがあります。第二次大戦後期の1940年代から1950年代後半にハリウッドでさかんに作られた犯罪映画のジャンルを指しており、殺伐とした都市を舞台にシニカルな主人公や謎めいた女性(ファム・ファタール)が登場するのが特徴です。

▼代表的なフィルム・ノワール作品

  • マルタの鷹(1941年)、監督ジョン・ヒューストン
  • 深夜の告白(1944年)、監督ビリー・ワイルダー
  • 過去を逃れて(1947年)、監督ジャック・ターナー
  • 白熱(1949年)、監督ラオール・ウォルシュ
  • 孤独な場所で(1950年)、監督ニコラス・レイ

時代背景として、第二次大戦でナチスの迫害を逃れハリウッドへ亡命した映画製作者たちが製作に多く携わったことで表現手法が伝わったとされています。

シャープなモノクロ画面やスタイリッシュな構図が作品に緊張感を持たせており、この手法を使って香港で製作されたものが「香港ノワール」と言われています。

「無間道」の意味とは?映画ネタバレ解説

火事

ここからは『インファナル・アフェア』という作品についてさらに深堀していきます。

ネタバレもありますので、まだご覧になっていない方はご注意ください。

マフィアでの生活が心身を蝕んでいく

警察学校に通うヤンはずば抜けた記憶力の良さを見出され、潜入捜査官に抜擢されます。しかしそのことを知るのは上司のウォン警視(アンソニー・ウォン)だけ。潜入を開始した日から綱渡りのような生活を送ります。

警察を志しただけあって正義感のあるヤンが組織に認めてもらうには、犯罪に手を染めなければいけないということ。自分のことを警察だと認識しているのはウォン警視だけという不安定さもあり、次第に精神の均衡を崩していきます。

そんなときに出会ったのが心理カウンセリングを行っているドクター・リー。彼女との出会いにより、唯一心を落ち着かせる場所ができたヤンですが、大きな麻薬取引の情報を得たことで警察がマフィア組織を検挙する絶好のチャンスが巡ってきます。

映画の原題である「無間道」とは、仏教用語でいう無間地獄に当たります。これはラウとヤンどちらにも当てはまりますが、より地獄を感じているのはヤンでしょう。本当の自分を知るのはウォン警視だけで、常に不安と隣り合わせの生活はいつ果てるともなく続く地獄で、唯一解放されるのが死という選択肢はやるせないです。

警察に潜入したがゆえの苦悩

ヤンとは対極に位置するラウ。きちんと警察学校を卒業しているので周囲は誰も疑うことなく、リーダー的なポジションについています。マフィアのボス・サム(エリック・ツァン)へ度々警察の情報を流すものの、ヤンとは違い順風満帆に日々を送っています。

そこへ訪れるサムの組織を壊滅させられるほどの麻薬取引の情報。マフィアの中に警察内通者がいると睨んだラウとヤンの攻防戦が始まります。結局、ラウの暗躍によって検挙は失敗に終わります。

ラウの無間地獄は、ヤンが死亡してから始まる印象です。長年警察に身を置いたことで、自分の中に葛藤が生まれていくのです。

主演は香港映画四天王のひとり、アンディ・ラウ

カメラ

香港映画界には、四天大王(または四天王)と呼ばれる香港を代表する俳優の総称があるようです。本作の主人公アンディ・ラウ(劉徳華)もそのひとりで、他にはジャッキー・チュン(張学友)、アーロン・クオック(郭富城)、レオン・ライ(黎明)の名が挙げられています。

これとは別に2017年にネットユーザーが厳選した香港四天王もあるようです。

▼2017年版香港映画四天王

  • ジャッキー・チェン(成龍)
  • チャウ・シンチー(周星馳)
  • チョウ・ユンファ(周潤發)
  • アンディ・ラウ(劉徳華)

ジャッキー・チェンをはじめ、こちらの方々のほうが日本で昔から目にすることは多いのではないでしょうか。

どちらの四天王にもアンディ・ラウは入っているので、かなりの実力派と言えるのでしょう。

日米のリメイク作品をご紹介

本作は、2006年アメリカで『ディパーテッド』というタイトルでレオナルド・ディカプリオ、マット・デイモン主演でリメイクされています。

また、日本でも2012年にリメイク作品が製作されており、『ダブルフェイス』というタイトルで西島秀俊、香川照之が主演です。

警察とマフィアの両方に似たような人物像の二人が潜入するというストーリーは、どちら側の視点に立って見てもおもしろい作品になっており、全3部作もあるため生い立ちや潜入時の精神状態などしっかりと作りこまれています。

ちなみに、『ディパーテッド』は外国映画のリメイクとしては史上初のアカデミー賞受賞作品です。

映画『インファナル・アフェア』のネタバレ解説まとめ

ここまで、映画『インファナル・アフェア』についてネタバレありでご紹介してきました。日米でリメイクされる優れたストーリー性のあるサスペンスなので、リメイク作品しか知らない方はぜひこちらもご覧ください。

作品詳細
原題:無間道(英題:Infernal Affairs)
日本公開日:2003年10月11日
監督:アンドリュー・ラウ、アラン・マック
脚本:アラン・マック、フェリックス・チョン
出演:トニー・レオン、アンディ・ラウ、アンソニー・ウォン、エリック・ツァン

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