【ネタバレ解説】映画『シャイニング』閉鎖されたホテルが狂気を生むサイコホラー

映画

ホラーの傑作と名高い映画『シャイニング』。ジャケットになっている「ドアのすき間から顔を出したジャック・ニコルソンの狂気に満ちたどアップの顔」を見ただけでも、なんとも言えない不気味さが感じられる作品です。

今回はそんな『シャイニング』についてネタバレありの解説をしていきます。まだ見たことない、もう一度見返したいという方は、ぜひチェックしてください。

映画『シャイニング』のあらすじ

雪山

ロッキー山脈に建つ人里離れた歴史あるホテル「オーバールック・ホテル」。夏のオンシーズンは人で溢れ活気がありますが、冬場は雪深くなり閉鎖されるため管理人だけが暮らす陸の孤島になります。

そこへ小説家志望のジャック・トランスが新たな管理人として、妻のウェンディと息子のダニーを伴い訪れることに。支配人からは念のため「前任が心を病み家族を殺して自殺したいわくつきのホテルだ」と語られますが、ジャックは気に留めることなくホテルへの住み込みを決めます。

ホテル閉鎖の日、ホテルの料理長ハロランは「このホテルはシャイニングを持っている」とダニーに語ります。実は、ダニーには不思議な能力「シャイニング」がありハロランも同類だと言うのです。ハロランはダニーに「237号室には近付くな」と忠告をしてホテルを去ります。

そして始まる3人だけの生活。外は猛吹雪で閉鎖された空間となったホテルでは、次第に家族以外の”なにか”の存在を無視できなくなっていくのです。

閉ざされた雪山のホテルで次々と起きる怪奇現象

猛吹雪で陸の孤島と化したオーバールック・ホテルでは、次々と怪奇現象が起きます。

印象的なシーンは突如現れる双子の女の子やエレベーターから押し寄せる血の津波です。このような怪奇現象は最初「シャイニング」の力を持つダニーにしか視えていませんでしたが、次第にホテルの異常さに感化されたウェンディにも視えるように。

実はこの双子、心を壊した前任の管理人の娘なのです。ダニーは双子が斧で斬殺するシーンを視てしまい、他の様々な恐怖映像も相まって徐々に心を閉ざすようになってしまいます。心を閉ざしたダニーが繰り返しつぶやく「レッドラム(REDRUM)」という言葉、鏡に映してみると「MURDER=殺人」を意味するのです。

スティーブン・キング原作との違い

本

『シャイニング』は、「ホラーの帝王」と異名を持つ数々のホラー作品をはじめ名作を世に送り出したスティーブン・キングが原作です。キング原作の小説は映画化されたものも多く、いずれも高い評価を得ています。

原作と違う点はいくつかありますが、まずは「シャイニング」というファンタジー的な能力についての言及がほとんどされていないことが大きいでしょう。

原作ではオーバールック・ホテル自体に不思議な力が宿っており、ホテルがジャックをどんどん狂気に取り込んでいくような描写があります。これに対し映画では、ジャックが狂気に陥るのはアルコール依存に加え、仕事や家族関係がうまくいかない現状への鬱屈によって精神状態が悪化していくという、ジャック自身の問題として描かれています。

また、エンディングは原作ではジャックがホテルと共にボイラーの爆発で木っ端微塵に吹き飛んでしまうのに対し、映画ではホテルの破壊はなくジャックはホテルの外に作られた迷路で凍死するのです。

「シャイニング」とは何か?映画ネタバレ解説

ここからは『シャイニング』という作品についてさらに深堀していきます。

ネタバレもありますので、まだご覧になっていない方はご注意ください。

息子・ダニーが持つ不思議な力の正体とは?

能力

タイトルでもある「シャイニング」とは、物語の中では未来視や過去視、そして同じ能力を持つもの同士のテレパシーなどの特殊な能力を指しています。

息子のダニーにはシャイニングの能力が備わっており、それゆえホテルで様々な映像を視てしまうのです。また、ホテルの料理長ハロランにも同じ能力が備わっており、ダニーとテレパシーを送り合うシーンもあります。

精神的に追い詰められ狂気に染まっていく

小説家志望のジャックは、アルコール依存や教師をクビになったなどの理由から精神的に不安定な状態です。もともと家族へDVもしているような人物だったこともあり、閉鎖された空間で徐々に精神の均衡を崩していきます。

家族3人しかいない隔離されたホテルで夫がおかしくなっていくことで、どんどん追い込まれていくウェンディとダニー。

最後には斧を持って二人に襲い掛かかってくるのを、ダニーのシャイニングの力を使ったSOSを受け取ったハロランの助けもあり、なんとか逃げ延びます。原作ではハロランも一緒に逃げのびますが、映画では活躍する描写があまりなく、あっけなく殺されてしまうという違いがあります。

舞踏会の写真に映るジャックの姿の謎

劇中ではたびたび、Barのシーンなどでジャックがいるはずのない人となんの疑問もなく親しげに会話する場面があります。この時点ではアルコールが見せている妄想なのか、ホテルに存在する”なにか”なのかは不明です。

しかし映画のラスト、1921年にオーバールックホテルで行われた舞踏会のモノクロ写真がアップされるのですが、はるか昔の写真になぜかジャックが映っているという謎が残されたまま終わります。

実は、ジャックは輪廻転生を繰り返しており、生まれ変わってもオーバールックホテルの持つ力に引き寄せられたのではという説があります。

監督・スタンリー・キューブリックのこだわり

映画

『シャイニング』を撮影するにあたり、監督・スタンリー・キューブリックの並々ならぬこだわりが発揮されています。

まず、ホテル内装のスタイリッシュさは外せません。Barやトイレ、社交場など通常のホテルよりも壁紙や床などおしゃれなところが目を引きます。

また、演技シーンへのこだわりも強かったようで、ジャックの扉のすき間から顔を覗かせるシーンは、わずか2秒間のシーンに2週間もかけて撮影されたそうです。その甲斐あって、ジャケットに使用されたその場面は多くの人の印象に残ったでしょう。

本作の40年後を描く続編『ドクター・スリープ』

2019年に公開された、『シャイニング』のおよそ40年後を舞台にした続編『ドクター・スリープ』。こちらもスティーヴン・キング原作で、ダニーのその後を描く物語です。

本作では、映画版『シャイニング』であまり触れられなかった「シャイニング」の能力が全面に押し出されているので、原作を読んでいないと少し戸惑ってしまうかもしれません。

大人になったダニー(ダン)は「シャイニング」の力を抑えるために酒におぼれ、アルコール依存症に。このままでは堕落していくだけだと気づき、ニューハンプシャーの小さな街に移住します。そこで社会復帰のためにホスピスで働くことになり、亡くなる直前の患者のために忌避していたシャイニングを使用。安らかな眠りを与えてくれることから「ドクター・スリープ」と呼ばれるようになります。

穏やかな暮らしを取り戻そうとしているダニーに、再びオーバールックホテルの亡霊たちが忍び寄ってきます。ダニーの「シャイニング」の力を求めている”なにか”は、まだ諦めていないのです。

映画『シャイニング』のネタバレ解説まとめ

ここまで、映画『シャイニング』についてネタバレありでご紹介してきました。今なおモダンホラーの傑作として位置づけられている名作であり、世代を問わずおすすめしたい映画です。

以前観たことがある方も、『ドクター・スリープ』と合わせて観ると新たな発見があっておもしろいかもしれませんよ。

▼作品詳細
原題:The Shining
日本公開日:1980年12月13日
監督:スタンリー・キューブリック
脚本:スタンリー・キューブリック、ダイアン・ジョンソン
出演:ジャック・ニコルソン、シェリー・デュヴァル、スキャットマン・クローザース、ダニー・ロイド

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